読み上げ機能付き将棋盤駒システムの有効性を実証的に検証した結果について、第226回ヒューマンインタフェース学会研究会「個々のニーズに立脚した高齢者・障害者支援技術および一般」にて発表してきました。
実験当日は、教室から米倉先生、浅井先生、多田先生にもお手伝いをいただきました。会員の皆様にも、ここでその結果をご報告させていただきます。
本研究の目的は、音声による案内が、操作や位置の把握にどのように役立つのかを、操作・位置認識・使いやすさの3つの観点から明らかにすることです。
まず操作支援では、音声案内があることで発話の負担が減り、操作に集中しやすくなると考え、操作時間と誤操作回数を比較しました。つぎに位置認識支援では、発話が不要になることで、位置をより正確に、より長く記憶できるようになるのではないかと考え、これを検証しました。最後に使いやすさについては、参加者が試作機を操作したあと、アンケートで評価しました。
● 実験A(操作支援)の結果
平均操作時間は、音声あり条件で約20.3秒、なし条件で約27.9秒となり、音声あり条件のほうが有意に短縮しました。
平均誤操作回数は、音声あり条件で約0.8回、なし条件で約2.0回であり、こちらも音声あり条件のほうが有意に少なくなりました。
● 実験B(位置認識支援)の結果
平均配置時間は、音声あり条件で約19.0秒、なし条件で約23.8秒となり、有意に短縮しました。
平均誤配置回数は、音声あり条件で約0.7回、なし条件で約1.3回で、音声あり条件のほうが有意に少なくなりました。
● アンケート評価(使いやすさ・心理面)
SUS の平均得点は87.1点(標準偏差10.4)で、操作の容易さ、理解しやすさ、機能の一貫性、自立的な操作性が高く評価されました。
また追加項目でも平均4点以上と高い評価が得られ、発話の負担が減ることで気持ちが楽になるなど、心理的な安心感や今後の利用への前向きな姿勢が示されました。
総合すると、本研究では、視覚障害者が駒を指すという自然な動作だけで、駒種と位置を同時に検出し、リアルタイムで読み上げる将棋盤システムを開発し、その有効性を実証的に検証しました。
音声提示は操作支援・位置認識支援の両面で効果を示し、使用感も良好で、発話負担の軽減が心理面の安心にもつながることが示唆されました。
以上より、本システムを用いれば、視覚障害者が発話やサポートに依存せず、自立して将棋を指すことが可能であることが示されました。
今後は、改良を重ね、誰もが共に楽しみ、学び合えるインクルーシブな環境の実現を目指します。本研究はその第一歩となります。読んでくれてありがとうございました。






